美術史ワード

ゴシック

 ロマネスクに次いでヨーロッパ全体に広がった美術様式。12世紀中頃,天井にアーチ型の肋骨(リブ)を交差させる工法が完成したことで,より効率よく石材の重さを支えることができるようになった。その結果,柱は天に向かって高く引き伸ばされて建築全体の垂直性が強調されるようになり,壁の大窓にはめ込まれたステンドグラスは,神秘的な光を堂内にもたらした。
 彫刻では,シャルトル大聖堂西扉口に見られるような,丸彫りに近い自然な丸みや繊細な衣のひだを備えた人像円柱が現れた。ゴシック聖堂を飾る彫像は,民衆にキリスト教の教義を説くために一貫性をもって組まれており,「石の聖書」「石の百科全書」とよばれる。この時代に社会はますます発展を遂げ,都市に住む裕福な市民や,学問の殿堂である大学が誕生した。美術はこうした新たな社会階層の人間によって担われることとなり,ロマネスクの威厳と超越性を備えたキリスト像よりも,より人間的で慈愛に満ちた聖母像に人気が集まった。