美術史ワード
バロック
16世紀半ばから17世紀のヨーロッパを席捲した美術様式のこと。元は規範から逸脱した装飾過多な美術に対する否定的名称だった。16世紀半ば以降,プロテスタントによる改革が進む中で,それに対抗するためにカトリック教会は, 宣伝活動のひとつとして大衆の感情に訴えかける美術を求めていた。したがって宗教美術に否定的な当時のプロテスタントとは反対に,バロックの絵画には生命力に溢れ情熱的な感情表現が見られる。
イタリアの画家カラヴァッジョは,写実的な肉体表現に強烈な明暗の対比を組み合わせて,劇的な絵画を描いた。あまりに迫真的な描写は時に教会から拒絶されたが,イタリア内外に「カラヴァジェスキ」とよばれる追随者を生んだ。バロック彫刻を代表するのは,建築家でもあるベルニーニで,巧みに現実の光を作品に取り込み,大理石で一瞬の動きや表情をあらわした。後にバロックは宗教画だけではなく,風俗画・風景画・静物画といった現実に密着したジャンルでも隆盛することとなった。
【関連する主な作家】
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(イタリア)
ピーテル・パウル・ルーベンス(ベルギー)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(フランス)
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(イタリア)
ディエゴ・ベラスケス(スペイン)
レンブラント・ファン・レイン(オランダ)
ヨハネス・フェルメール(オランダ)