美術史ワード
ビザンティン美術
ビザンティン帝国は,330年,コンスタンティヌス大帝によるコンスタンティノポリス遷都(別名ビュザンティオン,現在のイスタンブール)および,395年のローマ帝国東西分裂を経て成立し,その後、約千年もの間存続した。
西欧と同じキリスト教国とはいえ,ビザンティン帝国の国教となったギリシャ教会は,カトリックよりも現世的なもの,肉体的なものを否定する傾向が強い。また8世紀から9世紀にかけて,神の姿を描くことの是非を問う聖像論争を経験したことで,ビザンティン美術は霊性や精神性を志向するようになった。皇帝が有力なパトロンであったことから,宮廷趣味を反映し,金地と鮮やかな色彩,すらりとして優美な人体表現が好まれた。ビザンティン建築の典型的な聖堂の様式は,4本の腕の長さが等しいギリシャ十字型の内部構造に,いくつもの円蓋をかけたもので,フレスコ画やモザイクで壮麗に装飾されている。木板,象牙板,金属板などにあらわされたキリスト,聖母,聖人の像であるイコンも重要な美術領域であった。ビザンティン美術の規範は厳格なため,図像は厳密に体系化されている。
その影響範囲は,東地中海域とその内陸部はもとより,北はスラヴ諸国,西はイタリア半島にまでおよんだ。