書論とは
書論一覧
書に関する理論、論考、格言などを、「書論」といいます。先人の優れた審美眼は、私たちに新しい視点を与え、多角的な作品の見方を教えてくれます。
書道Ⅲでは、書論をもとに、作品を鑑賞してみましょう。
空海(くうかい)
必ず須らく心を境物(けいぶつ)に遊ばしめ、懐抱(かいほう)を散逸し、法を四時(しいじ)に取り、形を万類に象(かたど)るべし。
虞世南(ぐせいなん)
未だ書の意を解せざる者は、一点一画、皆本を象(かたど)るを求め、乃ち転(かえ)って自ら拙を取る。豈に書を成さんや。
黄庭堅(こうていけん)
古書を取り、細やかに看て、神(しん)に入(い)らしむれば、乃ち妙処(みょうしょ)に到る。
太宗(たいそう)
書せんと欲する時、当に視るを収め、聴くを反(とざ)し、慮を絶ち、神(こころ)を凝らすべし。心正しく、気和すれば、則ち玄妙に契(かな)う。
王羲之(おうぎし)
書するごとに、十遅五急(じっちごきゅう)、十曲五直(じっきょくごちょく)、十蔵五出(じゅうぞうごしゅつ)、十起五伏(じっきごふく)を得んと欲して、然る後、これ書なり。
蔡邕(さいよう)
書に二法有り。一に曰く疾、二に曰く渋。疾・渋の二法を得れば、書の妙は尽く。
鍾繇(しょうよう)
筆跡なるものは界なり、美を流す者は人なり。
孫過庭(そんかてい)
勁速(けいそく)は超逸の機、遅留は賞会の致なり。
蘇軾(そしょく)
吾が書は甚だしくは佳ならずと雖(いえど)も、然れども自ら新意(しんい)を出だし、古人を践(ふ)まず。
米芾(べいふつ)
字は骨格を要す。肉は須らく筋を裹(つつ)むべく、筋は須らく肉を蔵(かく)すべし。
董其昌(とうきしょう)
字は須らく奇宕瀟洒(きとうしょうしゃ)、時に新致(しんち)を出だし、奇を以て正と為し、故常(こじょう)を主とせざるべし。
包世臣(ほうせいしん)
法を習うこと易くして、体を創ること難し。
劉煕載(りゅうきさい)
書は如なり。其の学の如く、其の才の如く、其の志の如し。之を総(す)ぶるに、其の人の如しと曰うのみ。
趙之謙(ちょうしけん)
心を息(やす)め気を静むれば、乃ち渾厚(こんこう)なるを得ん。
尊円親王(そんえんしんのう)
所詮、能書の手跡は、生きたる物にて候。精霊魂魄(しょうりょうこんぱく)の入りたる様に見え候なり。さ候えば、字勢分よりも大に見え候。これは用を具足したる故にて候なり。