18 見えない誰かと

「エコー・チェンバー現象」と「フィルターバブル」

インターネットはとても便利ですが、ネットばかり使っていると、考えがかたよってしまう危険性があります。エコー・チェンバー現象やフィルターバブルにおちいりやすいためです。

エコーチェンバー

かたよった考えになりがちな「エコー・チェンバー現象」

エコー・チェンバー(Echo chamber)とは、「共鳴室」という意味の言葉です。共鳴室とは、閉じた空間で音がひびわたるように設計された部屋のことです。

SNSでは、似た価値観やかんきょうの人どうしでフォローし合ったり、「友達」としてつながったりすることが多いものです。そのため、SNSでは同じ意見を目にする機会が多くなり、それが真実で正しいことと思いんでしまいがちです。

これを、「エコー・チェンバー現象」といいます。

この状態におちいると、自分の周りにある意見だけが真実であるとさっかくしやすくなります。ちがう意見が目に入らず、かたよった特定の意見にり固まってしまう危険性があるのです。

けんさくサービスで起きる「フィルターバブル」

けんさくサービスでも同様です。ものを調べたいときに、けんさくサービスでけんさくするという人は多いでしょう。しかし、けんさく結果はじゅんすいけんさく順位で表示されるわけではありません。

例えば、あるけんさくサービスでは、けんさくした人の所在地や興味・関心、えつらんれきなどに合わせて、けんさくする人ごとにちがけんさく結果を表示しています。そういう仕組みが、けんさくサービスにはあるのです。

この状態に気づかないでいると、自分とちがった立場や意見の情報が入ってこなくなってしまいます。

このように、自分が作り上げたフィルターにバブル(あわ)のように囲まれ、それ以外の情報から切りはなされた状態を「フィルターバブル」とよびます。

■さまざまな意見に、意識的に耳をかたむけよう

さまざまな意見に耳を傾けよう

インターネット上では、SNSでもけんさくサービスでも、多くの場合、使う人に合わせて情報が調整されています。

最近はSNSでも、利用者のえつらんじょうきょうやリアクションなどから、好みを学び取り、その人が好みそうな情報を「おすすめ」として表示させるようになっています。

例えば、誤情報に多くアクセスしている人には、似たような誤情報が多く表示されたり、いんぼう論を好んでけんさくする人のもとには、いんぼう論が多く表示されたりします。そのような人たちは、自分が興味のある情報を多く目にすることで、自分の意見や考えが正しいとさらに強く思いんでしまい、ちがった情報にり回されたり、いんぼう論を真実と信じんでしまったりするというわけです。

インターネット上の情報は絶対的な真実ではなく、自分が好みそうな情報が表示されていることを知りましょう。

インターネットだけで情報収集を続けると、客観的な意見や反対の意見を目にしにくくなります。新聞やテレビのニュースを見るなどして、フラットな立場の情報や自分と反対の意見にも積極的に耳をかたむけましょう。それによって、自分の視野のせまさに気づいたり、立場によって意見が異なることを知ったりできるはずです。

〈文:高橋暁子(成蹊大学客員教授)、イラスト:まつだ こうた〉