インターネットはとても便利ですが、ネットばかり使っていると、考えが偏ってしまう危険性があります。エコー・チェンバー現象やフィルターバブルに陥りやすいためです。
エコー・チェンバー(Echo chamber)とは、「共鳴室」という意味の言葉です。共鳴室とは、閉じた空間で音が響き渡るように設計された部屋のことです。
SNSでは、似た価値観や環境の人どうしでフォローし合ったり、「友達」としてつながったりすることが多いものです。そのため、SNSでは同じ意見を目にする機会が多くなり、それが真実で正しいことと思い込んでしまいがちです。
これを、「エコー・チェンバー現象」といいます。
この状態に陥ると、自分の周りにある意見だけが真実であると錯覚しやすくなります。違う意見が目に入らず、偏った特定の意見に凝り固まってしまう危険性があるのです。
検索サービスでも同様です。ものを調べたいときに、検索サービスで検索するという人は多いでしょう。しかし、検索結果は純粋な検索順位で表示されるわけではありません。
例えば、ある検索サービスでは、検索した人の所在地や興味・関心、閲覧履歴などに合わせて、検索する人ごとに違う検索結果を表示しています。そういう仕組みが、検索サービスにはあるのです。
この状態に気づかないでいると、自分と違った立場や意見の情報が入ってこなくなってしまいます。
このように、自分が作り上げたフィルターにバブル(泡)のように囲まれ、それ以外の情報から切り離された状態を「フィルターバブル」とよびます。
インターネット上では、SNSでも検索サービスでも、多くの場合、使う人に合わせて情報が調整されています。
最近はSNSでも、利用者の閲覧状況やリアクションなどから、好みを学び取り、その人が好みそうな情報を「おすすめ」として表示させるようになっています。
例えば、誤情報に多くアクセスしている人には、似たような誤情報が多く表示されたり、陰謀論を好んで検索する人のもとには、陰謀論が多く表示されたりします。そのような人たちは、自分が興味のある情報を多く目にすることで、自分の意見や考えが正しいとさらに強く思い込んでしまい、間違った情報に振り回されたり、陰謀論を真実と信じ込んでしまったりするというわけです。
インターネット上の情報は絶対的な真実ではなく、自分が好みそうな情報が表示されていることを知りましょう。
インターネットだけで情報収集を続けると、客観的な意見や反対の意見を目にしにくくなります。新聞やテレビのニュースを見るなどして、フラットな立場の情報や自分と反対の意見にも積極的に耳を傾けましょう。それによって、自分の視野の狭さに気づいたり、立場によって意見が異なることを知ったりできるはずです。
〈文:高橋暁子(成蹊大学客員教授)、イラスト:まつだ こうた〉