西洋美術史年表

美術史用語

抽象美術

抽象美術とは、20世紀初頭に生まれ、今日まで続く、現実世界の具体的な対象を写しとらない美術の総称である。形や色、線といった造形要素それ自体で構成され、現実という表層の下に隠れた世界の本質を表現することを目的とした。

西洋美術は19世紀半ばまでは、現実世界を再現しようとしてきた。しかし、写真や科学の発展により、絵画の存在意義が問われるようになると、目に見えないものを描こうとするさまざまな新しい動きが現われるようになった。人間の内面を表現しようとしたフォーヴィスムやシュルレアリスム、複数の視点から対象を描くキュビスム、時間や速度を表現しようとした未来派などである。これらの芸術運動の刺激を受けて、対象物から完全に切り離された絵画が描かれるようになる。カンディンスキーが1910年に描いた作品が、初めて意図的に描かれた抽象絵画といわれている。他に最初期の代表的な抽象画家としては、モンドリアン、マレーヴィチ、クレーなどが挙げられる。

抽象美術は大きく分けて二つの傾向に分類される。カンディンスキーなどによる不定形な形と色彩で人間の内面を表現しようとする「熱い抽象」と、モンドリアンなどによる厳格な幾何学的形態で表現する「冷たい抽象」である。

【関連する主な作家】
ヴァシリー・カンディンスキー(ロシア、ドイツ、フランス)
ピエト・モンドリアン(オランダ)
カジミール・マレーヴィチ(ロシア)
パウル・クレー(スイス)

【関連する美術史用語】
キュビスム
シュルレアリスム
フォーヴィスム
未来派